開発の背景
グリーンビズダムに期待!
「緑化は都市のお化粧ではない」ということを今一度主張したいと思います。もちろん緑は景観、うるおいの対象としても重要ですが、複合的な都市環境の調節という重要なミッションを担っていくことを再認識すべき時期にきています。今世紀末の日本周辺の気候は、年平均気温が4.4℃上昇、大雨による降水量が平均40.5%増加、河川の基本高水を超える洪水の発生頻度は現在の最大4.4倍まで増加することが予測されています。地球規模の異常気象とともに都市部の異常気象も深刻であり、関連した災害も近年各地で頻発するようになってきました。既存の緑地を保全し、建築空間の特殊緑化を含む総緑地面積も増やすことによる都市レベルの暑熱環境緩和を図っていくことにより、都市の微気象緩和につながっていくことが重要です。一方、都市のこうした異常気象に基づく集中豪雨や洪水などはより早急に対策を講ずる必要がありますが、当然こうしたことが全く想定されていない時代に造成された河川、下水道等の都市インフラでは短期的には対応できず、また広域に改修するにも限度があります。そこで降った雨は極力その地域に還元するような機能をもつ緑地の配置が従前の都市インフラを協力にサポートすることになります。都市部に展開する相当の面積の屋上、ここに緑地を形成することはグリーンインフラとして、降雨を貯留、排水遅延に貢献します。しかしその多くは薄層の緑化で展開せざるを得ません。グリーンビズ基盤を用いた緑化は薄層でありながら、わずか数センチの厚さとは思えない貯水機能をもつことから、降雨による排水量を削減し、基盤と緑化植物を通じた蒸発、蒸散作用によって地域に水を還元します。まさに自然由来の基盤と植物によるグリーンインフラ施設であるグリーンビズダム。都市部の降雨対策は喫緊の課題です。個別の建築のみならず、街区、地区、地域レベルで広域にこうした緑化を展開していくことにより、都市圏、流域圏における減災対策に寄与することが期待されます。
飯島 健太郎 氏
グリーンビズ・ダム 特徴
- すべて環境にやさしい3R(廃棄物抑制、再使用、再資源化)対応品
- 耐候性に優れた無機セラミックス素材(プラスチック素材と違って紫外線や激しい温度変化など過酷な屋上環境に適している)
- 土を極力使わない。(雨による土流出などの影響を受けにくい)セラミックスの特長である「水質浄化」機能を併せ持つ。
- グリーンビズ基板は植物植生に適した素材で、様々な植物(中低木、地被)を組み合わせることで、美観を重視した庭園型緑化にも対応。
- 都市の豪雨対策に効果的な屋上緑化を実現。
グリーンビズ・ダム イメージ図
グリーンビズ・ダム実験報告
①実験目的
昨今の異常気象の中で、集中豪雨による都市洪水が問題となっている。建屋の排水経路(ドレンや竪樋)の排水量不足により、雨水が溢れる事態が起きている。
屋上にて、雨水処理能力を治水効果で改善することを目的とし、グリーンビズ基盤の保水力効果の検証、グリーンビズを用いた緑化での効果検証も併せて確認する。
実験は、基礎データー収集と梅雨から集中豪雨の起こりやすい夏季の期間にてデーター収集を行う。今回は、基礎実験としてグリーンビズ基盤の保水力、治水効果の検証を行う。また、断熱効果の付加価値をつけるために、グリーンビズ基盤にスタイロフォームを貼りつけた試験体による断熱効果測定を夏季期間行う。
②実験内容
・治水効果実験
- 集中豪雨 10分間当たり30㎜/㎡の降雨量を想定
- 1試験区を1000×2000の2㎡とする。(6試験区を設定)
- 未設置区
- グリーンビズ基盤(t32)1枚設置
- グリーンビズ基盤(t32)2枚重ね設置
- グリーンビズ基盤(t32)+土壌(10mm)
- セダム緑化基盤(グリーンビズ基盤(t32)+土壌+セダム)
- 低木緑化基盤(グリーンビズ基盤(t50+t32)+フィリフィラオーレア)
- a、b、c試験区に10分間で60ℓの水を与え、10秒毎の累積排水量を測定する。
- b〜fの各試験区で飽和状態から約3時間後に10分間で60ℓの水を与え、10秒毎の累積排水量を測定する。
- 今後の気象条件を加味し、サーモカメラにて表面温度を測定する。
- グリーンビズ基盤、グリーンビズ基盤+スタイロフォームによる断熱効果、表面温度の変化を観測する。1試験区を1000×1000の1㎡とする。
- 未設置区
- グリーンビズ基盤(t32)
- グリーンビズ基盤(t32)+スタイロフォーム(t30)
- グリーンビズ基盤(t32)+スタイロフォーム(t50)
- 6月14日より夏季期間10分ごとに表面温度、裏面温度を計測する。
- 今後の気象条件等を加味し、サーモカメラにて表面温度を撮影する。
③実験結果
- グリーンビズ基盤の、排水遅延効果が確認された。
- グリーンビズ基盤の、保水力が確認された。
- グリーンビズ基盤+スタイロフォームが断熱性を高くすることが確認された。
・治水効果実験
- 48時間以上自然乾燥した状態
- グリーンビズ基盤1枚:遅延効果約3分、保水力12ℓ/㎡
※今回は実験のため30㎜/10分の降雨条件としましたが、これは時間当たりに換算すると180㎜/時間となり、現実的には起こりにくいものです。注1それにもかかわらず降雨10分に対し3分の遅延効果は大きいと評価できますし、保水力12ℓ/㎡は仮に100㎡なら1.2tに換算され、その保水効果は絶大と考えます。(飯島先生)
注1参考:気象予報で使われる「猛烈な雨」でも80㎜/時間 - 基盤飽和状態から約3時間後の状態からの給水状況
下記グラフより約3時間後の実験でも遅延効果、保水効果が確認できる。
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グリーンビズ基盤1枚 :遅延効果約1分、保水力3.5㍑/㎡
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グリーンビズ基盤2枚重ね :遅延効果約2分、保水力3.5㍑/㎡
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グリーンビズ基盤+土壌 :遅延効果約2分、保水力5.5㍑/㎡
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セダム基盤 :遅延効果約2分、保水力5.0㍑/㎡
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上記実験結果より、グリーンビズ基盤の治水効果は大きく、基盤の性能が大きく寄与している。データーの詳しい解析、今後の継続実験により、さらに効果が判明すると推測できる。
・断熱効果実験
14日より計測を開始した。データーの収集はこれからであるが、午後3時の表示で、グリーンビズ基盤のみよりスタイロフォームを貼りつけた試験区で約10度断熱効果があった。スタイロフォームの厚さ30㎜と50㎜では差がほとんどなかった。今後も計測を続けます。
グリーンビズ・ダム 発表内容
①開発者(産学連携研究)
研究主体 | 東京都市大学総合研究所・環境学部併任教授 飯島健太郎様 |
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参加企業 |
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②発表趣旨
昨今社会的問題になっている集中豪雨をはじめとする異常気象の問題や都市のグリーンインフラの整備、既存建屋のリノベーションによる再生等を進めるうえで、都市、建屋の治水問題がクローズアップされてきました。
集中豪雨による、建屋からの一時的な排水の集中による排水処理能力を超えて起きる冠水等の問題、建屋改修時における、排水処理機能低下による問題があります。それらが集積することで都市問題として大きな問題となっています。
更に、防水層の劣化対策(建物の長寿命化促進)、建屋内への断熱効果を高めることでリノベーション効果をアップさせることが出来ます。
このような問題を抱えている中で、超保水セラミックス基盤を使用したグリーンビズダムは諸問題の解決に最適といえます。
今回の実験で、
- 保水セラミック基盤の保水力、排水に対する遅延効果の確認
(10分間あたり30mmの集中豪雨を想定) - 植物があることで、排水遅延効果に変化の確認
(10分間あたり30mmの集中豪雨を想定) - 保水セラミックス基盤の断熱性能効果、ポリスチレンフォームを合わせた場合の確認
(ポリスチレンフォーム厚30mm、50mm)
を行い、継続して計測中です。
基礎実験では良好な実験データーを得ることができ、治水効果、断熱効果があることが解りました。今後自然条件の中で継続して計測しています。6月16日から7月7日までの3週間で排水量がセダム緑化基盤を設置することで水が跳ねることなく緩やかに浸透することが解りました。
当実験から、保水セラミックス基盤の環境効果が大きいことがわかります。更に、それらの効果を合わせることで付加価値をつけ、複合的な環境問題にも対応できる商品、システムといえます。
「屋上緑化が治水効果を持つ」
「対候性のある不燃材で治水効果、蒸散効果、更にポリスチレンフォームと合わせ事により外断熱効果がある」
「屋上での治水効果を更に向上する為に、保水セラミックス基盤の周りに堰を作り治水効果時間を延長する」
「普段は屋上緑化、災害時には治水効果を発揮する」
「建物のリノベーションの問題点(排水機能)、課題を克服する」
今、グリーンインフラが重要視され、その中でも治水問題、暑熱対策は緊急性の高い問題です。これらを解決できるシステム『グリーンビズダム』は社会環境に貢献します。
- ポリエチレンフォーム
- 断熱効果大
- 保水セラミック基盤
- 建物(防水層)長寿命化
- 保水力で排水遅延効果 ゲリラ豪雨対策
- 保水力で蒸散効果 ヒートアイランド効果
- 保水セラミックス基盤+透水ブロック
- 保水力と貯水(ダム効果)で遅延効果◯大、透水ブロックの高さ、機能で遅延時間の調節可能 ゲリラ豪雨対策に効果◯大
- 建物改造時の排水機能低下対策に有効 リノベーション促進
外断熱+グリーンビズダムに付加価値をつける。普段は屋上緑化として周辺環境改善、癒し効果、人々が集う場所を提供する。
豪雨や猛暑時は、ダム効果(遅延効果)や断熱効果による暑熱環境改善効果(熱中症対策等)がある。
- 使用事例として、新築建物をはじめ、都営住宅や公団住宅、都市部の建屋の機能性向上を目的とした改修時に活用できます。
2017年7月25日の大雨だった日に実際に効果がありました。