秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル
カテゴリー:セダム タグ:ア、秋, グリーンビズ, コスモス, セダム, 太宰治, 読書の秋 2015年09月06日
我が家の玄関先で育てているセダムがいつの間にかほんのりと紅葉していました。
東京で8日間連続の猛暑日を記録したこの夏。
同様に金沢も暑い日が続き、今年の夏は例年以上に厳しいと思っていたのですが、
8月の下旬あたりから過ごしやすい日が多くなり、今ではすっかり秋の様相。
暑い暑いと言っていたのがウソのようで、いつの間にか秋がやってきたという感覚です。
もっとも、この「いつの間にか」という感覚は毎年のことで秋特有のものに思えます。
他の季節であればその変わり目がはっきりしていて、
例えば、冬から春なら春一番、
梅雨が明けたなら、 いよいよ暑い夏だとうんざりし、
木枯らしが吹けば長い冬を覚悟するといった具合です。
それに比べて、夏から秋はなんとも締まりのない季節の変わり目ですが、それを絶妙に表現した文章があります。
「秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル」
太宰治の短い随筆「ア、秋」の中に出てくる文章で、いつの間にか秋が来たという感覚を皮肉っぽく表現しています。
そのサワリ部分をご紹介。
「夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。耳を澄まして注意をしていると、夏になると同時に、虫が鳴いているのだし、庭に気をくばって見ていると、桔梗(ききょう)の花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉(とんぼ)だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。・・・」
さらには、
「もう秋が夏と一緒に忍び込んで来ているのに。秋は、根強い(ねづよい)曲者(くせもの)である。」と秋を茶目っ気たっぷりにこき下ろしてしまいます。
暗いイメージがある太宰治ですが、実は中々のユーモアの持ち主です。
そして、大文豪に言わせるなら、私のように「いつの間にか」と言っているような輩は注意観察力が足らないということになるのでしょうね。
さて…。
あちらこちらではコスモスが咲き始めたという話題もチラホラ。
いい季節の始まりです。
ただ、夏バテなど暑さの疲れが出てくるのもこの頃から。
ご自愛のほど、お祈り申し上げます。